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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
きのう慶応でいろいろ訊いて来たことの一つです。すっかり腰が立たなくおなりになったことが膀胱の活動をも鈍らせるのだそうです 麻痺によって。お父さんは、そういうものを五月蠅がりになるのです。
お父さんは何という直情径行の、そして一面弱い方でしょう! 何と弱い方でしょう! 貴方が少年時代から恐らく感じていらしったろうと思う種々の感情の明暗が、今度三週間暮してかなり推察されました。達ちゃんと隆ちゃんとでは情感の動きかたのタイプが違います。達ちゃんは常識の平面を横に動く。隆ちゃんの天性は縦の方です。生活が体をつかって、かえれば食べて眠くなる生活だから素朴な表現をもっているが。隆ちゃんはどこか貴方に似て来ている。
島田は確に昔より楽になって来て居ります。そのためには実に尽大な努力が払われ、やや小康を得て、すこしは家の気分にくつろぎが出ている。父上も寧ろ今は仕合わせな病人でいらっしゃいます。この半面には、この調子を保って行こうと欲する、極めて自然な要求が心のどこかにあって、それは、結果としては万事事なかれ風なものになっている。人間の心持というのは何と微妙でしょう。