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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
04 一九三七年(昭和十二年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,810 字 · 225 页
休息が今肉体的にも入用なのであるから、或意味で神経を鎮める上にも、自然の作用なのではあろうけれども。――私のしてあげる一寸したことでも実によろこんで下さる。すまないように悦んで下さる。よろこぶのを待ちかねていたようによろこんで下さる。そして、そんなによろこばれながら、そのよろこびは、全く日常性の範囲にだけガン強に限られていることを強く強く感じるのは何という悲しいよろこびでしょう。私はこれまでこんな感情は知らなかった。理屈に合わぬことは合理的なものの考えかたというところから話してやって来た、自分の親などにはずっとそうしてやって来た。
いろいろの点から、実にためになりました。本当に行ってよかった。これまでの私の生活の中にはなかったものが見られたし、接触出来たし。
一つ傑作のエピソードを。
或日、タバコ屋の方で人の声がする。前掛をかけた丸いユリが出てゆく。「バット一つ下さい」それが爺さんで、ユリの顔を見てはにかんだようにする。「ハイ、どうもありがとう、二銭のおつり」爺さんやっこらと腰をかけ、バットをぬいたがマッチをもっていない。「マッチがいりますね」わきの棚を見ると、マッチが沢山ボール箱に入っている。