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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

と目玉をクリクリさせました。「サア、どろぼーの意味か、枝でもかまわずらんぼうにかっぱらっちまえと云ったのか、何しろ植木屋だから私にも分らないね。」と大笑い。ひさにやる帯仕立上って来ました。立派になって。きょう、ひさは買いものに出かけて居ります。大変短くて御免下さい。相当埃くさいのがつんであるから、では、ね。

六月六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

六月五日  第四十七信

きのうは失礼いたしました。(手紙かかなかったこと)

きょうは又何と夏の暑さでしたろう。若葉を風がひるがえして吹く濡縁のところで、その風にひるがえるあなたの紺がすりの着物を眺めました。御気分どうでしょう。きょうは暑すぎるだろう、そう思いました。仕事していると、じっとり汗ばんで来ましたから。

きのう一日ねばっていて、きょうは書きあがる予定のところすこしのこりました。くたびれたから無理に押さず、明日にまわします。明治二十年から三十年ぐらいまでの世の中、文学作品、とくに女の書いたものとの関係で見るとき実に複雑ですね。一種の復古時代ですから。今書いているのは一葉の作品の完成性の考え直しで終り、今日一葉が再出現していることについての質問で終るのですが、それにひきつづく自然主義文学の時代に、婦人作家は何故水野仙子一人しかいなかったかという