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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

この金ではいろいろの悲喜劇があるらしい模様です。これまで本ものだと思いこんでいたものがテンプラとわかって、いろいろにごたごたを生じるようなこと、あっちこっちらしい風です。結婚指環売る売らない、そんなことで夫婦が心持の問題とするようなこともあるらしい。ウェディング・リングと云えば、日本でそういうものつかうのがハイカラアと思われていた時分、内藤千代子という今の大衆作家の先駆でしょうね、ひどく白粉を真白に塗ってひさし髪を立てていたひとが(写真で見ると)『女学世界』というようなものに、若い婚約者たちが婚約指環(ダイアモンド)を何かのはずみになくして、心持がもつれたりする小説を、甘々の文章で書いていたりしたが、それから見ると、そういう面の扱いかたもすれて来ているとおどろかれます。女学生のお相手が森田たま女史ですから。

昨日は、例の俗仙人内田百間とロシア語の米川正夫とが桑原会というのを宮城道雄のところで開き、招待が来ていました。大倉喜八郎(?)或は喜七(?)が「オークラロ」という尺八の改良したものを発明してそれを自分でふく。その日に。どうもそういう顔ぶれみたら気が重くなって行きませんでした。