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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

では明日ね。明日火曜日、ではお大切に。

「夏の庭の小さい泉」の話ね。世の中にはいろいろの共著があると思います。けれどもああいう作品は、そういくつもあるまいと思われます。

朝早く、涼しい光の満ちた庭で、段々泉が目ざめて行って、しかしまだ半ば眠りがうっとりとそこにのこっているようなとき。もっと早くおき出して溌溂としている鳥が一羽、そのふちに来てとまり、はじめは何となくそっと、やがて自分のやさしさに負けて、荒々しいよろこびにあふれながら、下草のまわりに飛沫をとばし、瞼をふるわせつつ水浴をする光景。そのときの小鳥の姿、そしてそのときの泉の様子!

その美しさを話すとき、私の声はひとりでにかわる程です。あなたの手をとって、そして話すような美しさ、ね。勿論、大切に大切にしてあります。

八月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(はがき 速達)〕

弁護士の件につき

お話のひと住所その他わかりまして問合わせたところ旅行中、一週間ほど後帰京の由です。それから『医典』、十二年版のしかなく本屋も古すぎると申します、月末まで待った方がよろしそうです。とりあえず。

八月九日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕