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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

06 一九三九年(昭和十四年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 374,755 字 · 745 页

青空文庫

両方かさなるのが現実です。しかし書く意味のあるのはやはり須磨子の内からのみでしょう。さもなければ、何もああいう情熱へのまけかたはしないのですから。生活によって、見どころのちがうところがしみじみと面白い。

たとえば、清少納言のことについて、きのう国文専門のひとと話して、「枕草子」の或場面で、清少の心ばえが、いかにも女房風情というところが、あらわれているところがあるのです。仕えていた中宮が権門の関係におされて、まことにおちめになり、藤原氏の女御が高くおさまっている。中宮は住居もひどいところに居られるが、互には愛していて、その端近のところへ来て朝二人ならんで立って、守護の武士たちが出入りする様子など眺めていられる。その姿はなかなか味深い人間らしいものです。清少はその姿にちっとも心うたれていないでね、只めでたしと見るだけで、自分の寝おきの顔を見ようとして来ている、あの有名な行成のことをかきつらねている。自分のそういう場合の心のありよう、二人のひとたちの愛のありよう、そういうものを沁々と思って見ないのです。そして才のたけた中宮支持の女房として相当きままして、宿へ下っているとき中宮が白い紙など下さると、うれしがって又出仕するという姿。