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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

本屋がつぶれたのかもしれません。

おかしいこと。きょうはまだ眠いというのはどうしたわけでしょう。これを書いたらちょいと枕を出して、コロリとなり又眠りましょう、今週は月曜以来きのうまで割合出る用がつづいて疲れたのかしら。

夕立があんまり見事に雄大で、それにうたれすぎたのかしら。露の重さというわけなのかしら。

わたしのもんぺ姿は、丸さはともかくとして好評ですが、御感想いかが? これからはああいう風体のことも珍しくなくなることでしょう。帰りに靴を買いました。サメの皮よ。それで雨に弱いって可笑しいと云ったら曰く「やっぱり皮んなっちまうと駄目ですなア」

九月八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

九月八日

さすがに八十度を越しても二三度という涼しさになりました。でも湿気のひどいこと。この頃は湿っぽさでやり切れない方です。

先週は疲れが出てひどかったが、今週になってよほどましになり、尿もいくらか澄んで参りました。

あんな位病気をすると、二三年は夏を特別用心するべきですね、来年は事情が許せばそのつもりでかかりましょう、今年は用事をぬきにしたって、私として何ヵ月も東京を離れる心持になれないところもあったわけです。