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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

一年近く御無沙汰した揚句には、ね。

この頃は光線の工合がよくて、余り疲れていないと新聞の字もよめます。そして、これは大変私の毎日をたのしくいたします。何しろ今の世界の面白さこそかかる世に生れ合わしたる身の果報というべきところがあって、新聞は今の新聞なりに面白うございますから。本当に丈夫になり、眼もはっきりさせ、世界歴史の面白さを、面白さとしてうけとれるだけ丈夫になっていたいと思います。面白さの反面にある大した困難は明らかなことであり、あんまり自分の巣についてぬくまった人々は、そういう変化から又刺戟をうけて、本来の雄大な動きを見失うようですから。

しかしながら、其につけても思うのは、一貫した生活態度――よく現実を見て、活々とそれに対応して、しかも原則をもった生きかた――のつよさ、効力、自立性というものを痛切に感じます。

一つ一つよせてはかえす波にばかり目をとられず、潮を見られる人が船のりでありましょう。操縦されはじめると、人間も本質的には終りね。秀吉だって若いときはそうでもなかったでしょうが、老年になって螢が泣く歌をよんだら、そろり新左が、螢が鳴いたということは天下にないとがんばって、すこしけんかめいて来たら、細川幽斎が、雨が降って鳴く虫は一つもいないのに螢ばかりが鳴いている、という古歌をもち出して、「され