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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

10 一九四三年(昭和十八年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页

青空文庫

隆治さんのことはまったくそうで、私はだから尚更あの人の素面で経た辛苦を尊敬いたします。写真送ります。

二月六日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 封書)〕

二月五日

今日は旧の元日だそうです。小春日和でしたね。三日のお手紙ありがとう。タチバナの本はまだ注文してありません。そちらでやって下さいますか、ありがとう。

開成山から佐藤と云う当年四十二歳のとっさまが来て、これは祖母の時代に一郎爺さんと云うのがいて、別名目玉の爺やと申しました。その娘がおけさ、と云って、たいした働き者で、身上をこしらえましたが、或時亭主の留蔵が浮気をして、猛烈な喧嘩が始ったとき、亭主は建てたばかりの家をぼっこしちゃうと云ってぶちこわし始めました。そしたらおけさも、ふんだら俺も手伝うと云って障子を持出して、蹴こわして、火をつけました。往来の真中でやったのよ。そしたら留蔵がかえって毒気をぬかれて、もうよかっぺと云って、仲なおりした逸話があります。その婿で今日では翼賛会の青壮年団長、促進員、隣組長と云う、流行男ですが、相当なもので、炬燵にあたりながら、一夕気焔を拝聴して大変ためになりました。