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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
本質的にはああいう詩の十篇より永もちのする値うちがこもって居ります。何故ならこういう力のいる一生に何度という扉のあけたては、気が合って、四つの手の気合いがそろって、じり押しに押した揚句くるりと展開するのですから。お祝いにわたしは小説のプランをさしあげようと思います。
十月五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕
十月四日 つづき
一人の作家のなかにある、作家とモラリストとの関係は、いろいろ興味ふかく且つ本質にふれた問題ですね。芸術の向上の歴史がそこに語られても居るようです。この間いろいろ考えているとき、芥川の「或る日の馬琴」を思い出しました。つづいて「地獄変」を。
こういう問題のチャンピオンはトルストイと考えられていて、たしかに彼はあの強壮な精神と肉体との全力をつくして立てられる限りの音をたててこのたたかいを行いましたが、考えてみると、実に不思議に自分の枠をはずせなかった人ですね。あんまり枠が大きくて、つよくて、こわれなかったのかもしれないけれど、最後の家出にしろ修道院に向ってであって、それは客観的には最も彼にとってやさしい方向でした。