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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
そういう人たちは、自分たちが男に生れ、女と生れて、そこにめぐり合ったということを、自分たちの恣意の中に消耗してしまうには余り価うちのあることと心から感じる人たちです。大抵は、夫婦は自分たちが夫婦であるということで、もうそれをはかる目やすのないことのように生きてしまうのね。そして、ふだん着のように、互の癖になれているという工合よさでダラダラ生きてしまうのだし、すこし狡いのは、対手をほめることで、自分へのマイナスをぼやかして、つまり互を下落させてしまう。生活となれ合ったらもう文学なんてどこからもうまれません。だから、わたしは、おっしゃるとおり意久地なしだけれど、良薬が良薬であることはどうにも否定出来ないのよ。ポロリ、ポロリと涙だしながらも、其那薬なんか御免と云いかねて、のむのよ。マアいじらしいみたいなものね。その様子を見て、あなたも思わず口元がほころびるという次第なのでしょう。
『英国史』はいつかよんで見ましょう、あいたらかして下さるかしら。
きのうはあれから、裏の電車で神保町行きのあるのを思い出し、六法、早い方がいいと思って、初めて神田へ行きました。