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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
10 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,557 字 · 426 页
伊豆なんかはお米をかついで行ってひるめしだけ三円、凡そ一日には十二三円以上かかることになって来ました。上林は米をまだもってゆかずといいし、あすこは樹木が多い道があっちこっち散歩するに目のためにいいと思って。カラリとした高原は今年は駄目です。肝臓のためには石見の三朝が随一で、この次島田へ行くのは、そこをまわって小郡へ出て見たいものです。京都からのりかえて山陰本線土井までですから、今すぐでは無理でしょう。物資は大体西の方はゆとりないそうですが。
さあ、もうおやめね。
あなたの衣類はうちの連中のほかに栄さんにわかって貰うようにしました。いろいろと思慮の不足した処置があるかもしれないけれども、どうぞあしからず。これだけ手くばりしておいて万々※一やけず、ふっとばずであったらそれはおめでたいというわけです。
では又近いうちに、別に。
三月十五日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(代筆 田舎の風景の写真絵はがき)〕
この写真は春の日射しよりも秋らしいあざやかさですね、昔、『文新』から行った千葉の開墾部落もこうゆう家が並んでいました。あの時は南京豆がうんと作ってあって、おいしい山の芋の御馳走になりました。