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ばくおう

獏鸚

海野 十三

「新青年」博文館、1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,493 字 · 33 页

青空文庫

「一体何処へ隠れてしまったのだろう?」

巨人金庫の前に詰めていた特別警備隊も、二日、三日と経つと、すこし気がゆるんできた。そして空しく巨億の財産を嚥んでいる大金庫を憎らしく思い出した。

そのとき、わが友人帆村は、幽霊のようになって、その穴倉の中に入ってきた。――警備員はそれを見るなり皮肉な挨拶をするのであった。

帆村は黙々として、ポケットからノートを出した。右手をダイヤルに伸べ、左手で電気釦を押しながら、私の差しだす懐中電灯の明りの下で、彼の誘き出した第一、第二等々の解読文字を一つ一つ丹念に試みていった。――しかし今日もまた空しい努力に終ったのだった。

「いよいよ二三日うちにこの金庫を焼き切ることにしたそうだ……」

と、そんな噂が耳に入った。その噂だけが今日の皮肉な土産だった。

家にかえると、帆村は黙々として、また白紙のうえに、鉛筆で文字を模様のように書き続けるのだった。

「どうしたい。ちと憩んではどうか」

と私は彼に薦めた。

「もうすこしで解けるのだが……。これを見給え」

帆村は次のような紙片を私に見せた。

ムサオオニサ」マワイ」ムサワトソネノタシ」マダノイナイ」