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たまとりものがたり

玉取物語

久生 十蘭

「別冊文藝春秋 第二十四号小説二十人集」1951(昭和26)年10月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,495 字 · 19 页

青空文庫

小葉を充すは直細精管にして、一端は盲端に終り、他端は縦隔中に吻合して網状となる、とある。扨、ふぐり玉の腫瘍には瘡毒、癌種による悪性のもの、高熱、外傷による良性のものとの別があり、猶また局所の肥大には繊維腫、液腫、軟骨腫、骨腫、筋腫に分けられるが、無痛のものにあっては、癌腫の疑いを残すが多く、また良性の肉腫に於ても漸次大を増して小児頭大に達し、精系に進入して悪性腫瘍に転位するもの故、有痛無痛に関らず、肥大の形勢にあるものは、可相成は速かに摘出するがよいとある。

そうそうするうちに、その月の末つ方、殿の御物は成人の拳ほどの大きさに生長いたした。御痛みの方は以前ほどにはないようであったが、過大の一物を甚く御憎しみになり、あおのけに寝たまま、「こやつめが、こやつめが」と飽く期もなく罵られるようになった。殿が御物にたいする辞宜もさることながら、この儘に捨て置いては、鉄丸の重さに引かれ、明日にも地獄の底へ落入られるやのあやうい境界に立到った事故、いずれとも匆々に処置いたさねばならぬ羽目になった。殿におかれても、始めがほどは、手荒な取扱いを厭われるげな気味合で、自然と話を外らされるふうであったが、此の態に及んでは、流石に観念の臍を据えられたものとみえ、さる日、お側小姓に「短冊を持て」