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げんだいのさじゅつ

現代の詐術

坂口 安吾

「個性 第一巻第一号」思索社、1947(昭和22)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,471 字 · 25 页

青空文庫

夜が明けると来るわ来るわ、後へ並ぶ人間より前へ割込む人間共がはるかに多い。

オバサン、こっちよ、私たちの隣組、こゝよ、と言うと、アヽ、そうか、案外うしろの方だね、などゝ言いながら、前後左右から一人三人、たちまちにして私は百番目以下になってしまうのである。

こゝに至って、私は座の起源というものに新認識を加え、これはヨタモノの縄張りと同じものである。もっとも、組合や座がヨタモノの集りだというのじゃなくて、人間窮すればみんなヨタモノである、ヨタモノの縄張りの精神に帰する、要するに、然し、窮しているからだ。

タバコが豊富にあれば、隣組座というようなものができて行列の座、まことにこれ座ではないか、文字通り座席である。座や権利を主張するには及ばない。

昔も窮していたのだろう。徒党を組んで共同戦線をはらないと、やって行かれぬ境地にあったに相違なく、然しその結成の由来に於てはパンパンガールの縄張りと変りのある筈はない。

だから読者諸君、銘記したまえ、戦争以来、日本は目下、中世なのである。つまり我々は父祖伝来ゆずり伝えたカミシモをつけ、もう電燈もガスも鉄道もある、道義も人情も仁愛もある、法律もあり統制された秩序もある、だから中世じゃない、こう考えて、そのカミシモを疑うことを知らなかった。