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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

財閥というワケにはいかないわね。でも重役なら悪くないな。平社員じゃイヤよ。私の力でかならず成功させてあげますから」

「これは有りがたきシアワセです。それはもう一国一城のアルジとなりました上は、重役はおろか、わが社の女神としておむかえし、犬馬の労をつくさせていたゞきます」

「あなたは冗談なのね。笑ってらっしゃるわね。どうしてマジメにきいて下さらないのよ。私、シンケンなんです。天草商事なんて、大キライ。こんなところに働くのはイヤなんです。私の言うことマジメにきいてちょうだい。そのかわり、私も本当のことを言いますわ」

ツル子の顔から血の気がひいてしまった。まんざらジンのせいだけではないらしい。小娘にはスパイはつとまらない。

ツル子の気魄はリンリンとたかまり、するどくサルトルを見つめて、

「私をたゞの接待係と思ったら、大マチガイよ。こんな広い邸内に、ただ一人、酔っ払いのソバに坐ってる接待係なんて、いやしないわ。わかったでしょう、サルトルさん。私、スパイなんです。本当にあなたが阿片もってらっしゃるかどうか、それを突きとめる使命をおびたスパイです」

一気に告白してしまった。