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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

と、雲隠才蔵がなだめた。

「常務のガンコ信心ときちゃ、会社だって、諦めてるんだからな。箱根なら箱根、一ツ処に長持ちしてくれりゃ、ボクら、かえって仕事がしいいや。間宮さんにノブちゃんにボクと秘書が三人も居るんだもの、会社のレンラクは、わけないよ」

「アア、ほんと、その通り」

と、間宮坊介が才蔵に相槌を打った。フツカヨイもどうやらさめたらしいが、今度は、ねむたそうであった。

「常務の身の廻りはボクがいるから大丈夫だ。ボクは常務と一緒にノンビリ温泉につかっているから、レンラクはもっぱら若い者がやってくれよ。そのたんびにウイスキーを忘れず運んでくることだよ」

「チェッ。のんびりしてやがら」

神を怖れざる若者どもである。正宗菊松はハラハラした。今のさッき自分が蹴倒され、踏んづけられて魂をひきぬかれたばかりだというのに、なんたる奴らであろうか。コウーラッ、魂をぬいてくれるぞウッという怒号が尚耳に鳴り、ハラワタにしみているではないか。けれども彼らは平然たるものであった。正宗菊松が蹴倒される寸前に彼らはいち早く伏して拝むことを忘れなかったが、ある危機の時間がすぎると、かくも平然たるものである。