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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

神の使者は、もはや彼らを怒らない。いかなる嗅覚によって危機をかぎ当てるのであろうか。正宗菊松は身の至らなさを嗟嘆した。

「正宗はどこの宿に泊っているか」

「ハイ。明暗荘でございます」

神の使者の声がかゝると、若者たちの分も自分が叱られるように思われて、身の竦む思いがするのであった。彼は一々両手をつき、平伏して返答した。

「正宗の子息と娘は何歳であるか」

「ハイ。エエと、知らぬ顔の、左様でござります、半平は二十五、ツル子は二十一に相成りまする」

「当分、毎日くるがよい。魂をみそいでつかわすぞ」

「ハハッ」

菊松は平伏した。神のお怒りは解けたらしい。すると半平が、又、口をいれた。

「ほらね。あれだからね。オヤジは信心とくると、理性を忘れて、からだらしがないからねえ。平伏するばッかりなんだよ。毎日おいで、と云われたら、何時ごろ来たらよろしいですか、と訊くのが自然の理知というものだね。オヤジは神様の前へでると、てんで、なってやしないねえ。これで、よく、会社の重役がつとまるもんだよ」

「だからさ。キミがそんなに云っちゃアいけないよ。そこは、ちゃんと秘書というものがついてるのだからさ」