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げんだいにんじゅつでん

現代忍術伝

坂口 安吾

「講談倶楽部 第一巻第八号~第二巻第三号」1949(昭和24)年8月1日~1950(昭和25)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,446 字 · 155 页

青空文庫

殊勲甲だよ」

と云った。そして口笛をふきながら、夜の温泉場をひやかしに、姿を消してしまったのである。

唐突に感謝をこめてギュッと手をにぎり、女性のようにやわらかく笑いかける半平が、又しても、彼は怖しかった。今日はこれでよかったが、ひとたび失敗すれば、容赦なく彼をクビ切り、叩きだしてしまうに相違ない残忍無慚な魂が裏にひそめられているようである。得体の知れぬ青二才に一身をまかして道化の主役を演じさせられている身のつたなさが、やりきれない。然し、嬉々として仕事に没入する彼らの溢るゝ生活力は驚異であった。

「畜生め。どうしてくれたら腹の虫がおさまるのか」

やにわに飛び起きて、ねているチンピラ共を蹴倒し、踏みつぶして、魂をぬいてやりたいと思った。この世には悲しい思いがあるものである。

その四 寝小便の巻

正宗菊松はふと目がさめた。襖を距てた隣室へ誰かゞ戻ってきたのである。酔っ払って、ドタバタと重い跫音がもつれている。

「半平の奴、ひどすぎるじゃないか。なにも女の子を隠しだてすることはないよ。なア、坊介、そうだろう。ツルちゃんが好きなら好きでいゝけどよ、ノブちゃんまで一緒につれだして隠すことはないよ。