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こはくのパイプ

琥珀のパイプ

甲賀 三郎

「新青年」1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页

青空文庫

「昨日二人は、別に変った様子はありませんでしたか?」

「別に変った様子はありませんでした」

「近頃坂田の所へ客があったような事はなかったですか?」

「ありません」

「あなたは何か人から恨みを受けている様な事はありませんか?」

「恨を受けているような事はないと存じます」こう云いながら、彼は側に立っていた青木を見つけて、「いや実は近頃この町内の方からは可成り憎まれて居ります、それは私が町内の夜警に出ないと云う事からで、そこに御出でになる青木さんなどは、最も御立腹で私の宅などは焼き払うがよいとまで申されましたそうです」

検事はチラと青木の方を向いた。

「怪しからぬ」青木はもう真赤になって口籠りながら、「わ、我輩が放火でもしたと云われるのか」

「いやそう云う訳じゃないのです」彼は冷然と答えた。「只あなたがそんな事を云われたと申上げた迄です」

「青木さん、あなたはそういう事を云われましたか?」

「えゝ、それは一時の激昂で云った事はあります」

「あなたが火事を発見なすったのは何時でしたかね」

「それはさっき申上げた通り、二時十分過位です」

「火の廻り具合では、どうしても発火後二三十分経過したものらしい。