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こはくのパイプ

琥珀のパイプ

甲賀 三郎

「新青年」1924(大正13)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,109 字 · 37 页

青空文庫

所があなたはその前に二時十分前に、この家の庭を通って居られる、そうでしたね」

「その通りです」青木は不安らしく答えた。「然し真逆私が――」

「いや今は事実の調査をしているのです」検事は厳として云った。今度は福島に向って、「火災保険につけてありますか」

「はい、家屋が一万五千円、動産が七千円、合計二万二千円契約があります」

「家財はそのまゝ置いてありましたか」

「貨車の便がありませんから、ほんの身の廻りのものだけを郷里に持ち帰り、あとは皆置いてありました」

「殺人について、何も心当りはありませんか?」

「さあ、何も覚えがありません」

その時一人の刑事が、検事のそばへきて何か囁いた。

「松本さん」検事は青年記者を呼んだ。「死体解剖其の他の結果が判ったそうです。これは係官以外に知らすべき事ではないが、あなたの先刻からの有益なる御助力を謝する意味に於て御話ししますから一寸こちらへ御出下さい」

検事と松本は室の隅の方へ行って、低声で話し出した。私は最も近くに席を占めて居たので、途切れ途切れにその話を聞いた。

「え! 塩酸加里の中毒、はてな」松本が云うのが聞えた。

話の様子では机の上にあった菓子折の中には最中が入って居り、その中には少量のモルヒネを含んでいたのである。