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あまいのべ

甘い野辺

浜本 浩

「あまカラ 10月号 第五十号」甘辛社、1955(昭和30)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,835 字 · 4 页

青空文庫

高知市外の潮江天満宮には、椋と榎の並木があった。大粒で肉付きのよい椋の果は小粒で色の美しい榎の果より、はるかに甘く、一合も食べたら、結構おやつの代りになった。私たちは、学校から戻ると、何を置いても天満宮の馬場へ飛んでいった。

昨年の夏、私は五十年ぶりで、天神様の土手に立つことができた。椋も榎も昔ながらの枝ぶりで、登るときに足をかけた幹の瘤まで、その頃のままに残っている。だが、このごろは、菓子の代りに木の果を食べる子供たちはいないと見え、熟れ落ちた木の果が土手の下草を埋めていた。

中学生の頃、高知市から十里離れた海岸の町に住んだことがあった。そのあたりは砂糖の産地で、浜辺から裏山にかけ、いちめんの甘蔗畑であった。春の初めに植えつけた甘蔗苗が、夏になると六、七尺にも伸びる。私たちは海へ泳ぎに行ったついでに、甘蔗畑へ忍びこみ、よく肥った茎を折りとって、歯ぐきや唇を傷つけながら、噛んだものである。茎の青い在来種より、茎の紫色をした台湾黍のほうが水気も多く甘かった。

そんな時に、たまたま畑の土が柔らかく湿っている所を見つけることがあった。掘ってみると、卓球のボールほどの海亀の卵が、二十も三十も埋められているのだった。