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あまいのべ
甘い野辺
浜本 浩
「あまカラ 10月号 第五十号」甘辛社、1955(昭和30)年10月5日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,835 字 · 4 页
夜間に上陸した母亀が土を掘って産み落したものである。殻の柔らかな亀の卵は、その場で食べるわけにいかないので、麦藁帽子にいれて戻り、焼卵にした。臭気があって、うまいものではなかった。
川原へ泳ぎに行った時は、川岸の藪に咲いた忍冬の花の蜜を、むちゅうになって吸ったものである。すいかずらとも呼ばれる、忍冬の白い花の、懐しい芳香が、半世紀を経た今でも、鼻のどこかに残っている。
町の商人は、夏の終りに苅り採った甘蔗の茎を買い溜め、貯蔵しておいて、秋祭りの鎮守の市で、一本一銭か二銭に売った。
太平洋戦争のさいちゅうに、信州蓼科山麓の豊平村に疎開していた私たちは、配給の砂糖さえ思うにまかせぬ状態であったので、子供の頃を思い出し、砂糖黍の種子を手に入れて栽培してみたことがあった。が、山国では育ちが悪く、茎も小指ほどにしか発育せず、水気も甘味も、まるでなかった。
秋になると、私たちは裏山の林に分け入って栗や椎の果を拾った。が、何と言っても槙の果ほど子供たちに喜ばれたものはなかった。喬木の槙の木は、栗や椎の木のような下枝がなかったので、木登りの上手な子供でなければ登ることができない。