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いきているかんばん
生きている看板
小川 未明
「早稲田文学」1927(昭和2)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,965 字 · 6 页
彼は、なんと思ったものか、また、絵の具を出して、はしごへ上りました。そして、しばらく筆を使っていましたが、やっと、それで満足したように、絵をながめて、はしごを降りると自分の家の方へ帰ってゆきました。そのときは、もう、あたりが、暗くなって、人の顔が、はっきりわからなかったのでした。
翌日の朝、番頭は、外へ出て、ゆっくり看板を見ようとして仰ぐと、あっ! と声をたて、驚きました。彼は、あわてて家へはいると、
「おい、みんな出てみな!」と、小僧たちにいって、騒ぎました。
それも、そのはずのこと、看板の美人の頭に、一本の小さな角が生えていたからです。
「一晩の中に、角が、ひとりでに生えるわけはない。看板屋が、後から描いたに相違ないが、なぜこんなことをしたのだろう。」と、番頭はいったのです。
「これから、看板屋へいって、呼んできて、描きかえさせなければならん……。」と、番頭は怒りました。
このときまで番頭の後ろに立って、ものをいわずに、看板を見ていた、菓子屋の主人は、
「いや、描きかえさせなくていい。なかなかおもしろいと思う。きっと、この看板は、世間の評判になるだろう。