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せいとしとのきろく

生と死との記録

豊島 与志雄

「帝国文学」1918(大正7)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,961 字 · 39 页

青空文庫

一通り診察がすんだ。腸に大分食物が停滞しているとのことだった。然し別に心配するほどではないとのことだった。長い間ひどい腸の病気に悩んで来た後だったので、そしてそういうことはよくあったので、私は別に驚きもしなかった。

氷枕で頭を冷やし、また額も冷してやった。四時すぎに一回便通があったが、大して悪い便でもなかった。五時に医者の許から貰って来た薬を与えた。熱をはかると七度六分に下っていた。

「やっぱり何でもなかったようだね。」と私は云った。

「熱が下れば宜しいんですわね。」と芳子は答えた。

然し私達は何だか心の底で不安だった。妙に堯は睡眠を欲しているらしかった。それでも食事の時にははっきり眼を開いていたので、私は褞袍にくるんでいつものように足座の中に抱いてやった。粥を止して、麺麭をやった。その二片を堯は食べた。それから山羊乳を五勺足らず飲んだ。

六時すぎに下痢が一回あった。真青な便だった。八時頃また一回下痢した。青い色が妙に濃く黒ずんでいた。そしていつもうとうとと眠っていた。

私達は悪いと思うとまた急に不安になった。堯については私達は昨年以来たえず腸で脅かされて来た。