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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
また佇んだ碩寿翁の、足もとに置かれてある小箱から、何と美しく何と高貴な、光が放たれていることか!
その翌日のことであった。四挺の駕籠が前後して、柏屋の門口からかき出され、高山の方へ進んで行った。
四方を森林に囲まれているので、丹生川平は丘の上にあったが、極めて陰気に眺められた。
切り株に腰をかけながら、話している若い男女があった。
「あなたには大分変わられましたな。昔より陰気になられたようで」
「……でもあなたがおいでくださいまして、陽気になりましてございます。……あなた、お体はよろしいので?」
「いずれも微傷ゆえ大丈夫でござる。……が、あのような経験は、拙者、一度で充分でござる」
「何と申し上げてよろしいやら」
「みんな弦四郎めが悪いので」
二人は茅野雄と浪江とであった。
と、背後から声がした。
「まあそう拙者を憎まないがよろしい。……大した悪人でもありませぬからな」
別天地
丹生川平という別天地に、宮川茅野雄と醍醐弦四郎とが、一緒に住居をしているとは、ちょっと不思議と云わなければならない。
考えて見れば不思議ではなかった。
茅野雄は丹生川平の長の、宮川覚明の甥であって、覚明の娘の浪江によって、招かれている人物であった。