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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

――が、これだけは頼んで置く、白河戸郷は丹生川平の敵だ。で、どうともして滅ぼさなければならない――滅ぼす策を講じてくれ」

こう云って茅野雄を迂散そうにさえ見た。

(驚いたな)と茅野雄は思った。

(昔の伯父はこんな人ではなかった。何らか神は信仰していたが、もっと性質が明るくて、秘密など持つような人でなかった。……それだのにどうだろう今の伯父は、山師にしてしかも狂信者! と云ったようなところがある。それにどうだろう伯父の風采は?)

覚明の風采は妙なものであった。切り下げの長髪を肩へかけ、異国めいた模様の道服を着し、刺繍の沓を穿いていた。

(それに恐ろしく勿体ぶるではないか)

これも茅野雄にはおかしかった。

覚明は容易に人に逢わず、絶えず居場所を眩ませていた。時あって姿を現わす時には、十数人の侍者に周囲を守らせ、威厳をもって現われた。

そうして茅野雄に対しても、伯父甥として対しようとはしないで、一宗の祖師が一介の信者へ対するような態度で対した。

で、茅野雄はある時のこと、浪江に向かって問いを発した。

「伯父様の奉じている宗教は、回々教でございましょうな?」

こう問うたのには訳がある。