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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

長閑な会話

しかしその時には浪江を抱いたまま、茅野雄は背後へ飛び退いていた。

茅野雄と浪江とは若かった。その行動も敏捷であった。

しかし覚明は老人であった。行動は鈍く敏捷でなかった。

このままで推移したならば、茅野雄と浪江とは遁れられるかも知れない。

と、云うことが解ったと見える。

大音声に覚明は叫んだ。

「教法の敵こそ現われましたぞ! 方々出合って打って取りなされ!」

オーッという応ずる高声と、ワーッという大勢の鬨の声とが、忽ち四方から湧き起こった。

しかるにこの頃数人の武士が、丹生川平の境地を下り、例の曠野まで続いている、大森林を分けながら、曠野の方へ辿っていた。

醍醐弦四郎と部下とであった。

「まごまごしていると追っ払われるぞ」

こう云ったのは弦四郎であった。

「丹生川平をでございますかな」

こう云ったのは半田伊十郎であった。

「ああそうだよ、丹生川平をさ」

「お立ち退きなさればよろしいのに」

「途方もないことを云うものではない。あれほどの宝とあれほどの女を、うっちゃることが出来るものか」

「それはまアさようでございましょうが」

「俺が内陣へ入りたがっている。