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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

「とうてい外へは出られません。奥へ参ることにいたしましょう」

男女は茅野雄と浪江とであった。

郷民達に襲われたので、茅野雄は殺生とは思いながら、幾人かの郷民を叩っ切り、浪江を連れて逃げ廻るうち、岩山の洞窟の口まで来た。と、洞窟の口があいた。外の騒ぎが烈しかったので、洞窟を守っていた番人が、外の様子を見ようとして、内部から扉を開けたのであった。

そこで茅野雄は(しめた!)と思った。(洞窟の中へ入ってやろう)――で浪江を引っ抱えて、洞窟の中へ突き進んだ。と、番人が切ってかかった。それは峰打ちに叩き仆して置いて、茅野雄は中から扉を閉じ、ガッシリと閂を下ろしてしまった。

――で、今、洞窟の中にいるのであった。

外から大勢の郷民達が、扉を叩いたり喚き声を上げたり、番人に向かって扉をあけるようにと、命じている声が塊まり、ワーンというように聞こえてきたが、番人は気絶をして仆れていた。なんの扉をあけることが出来よう。

で、今のところ茅野雄も浪江も一時安全を保つことが出来た。

とは云えいつまでも洞窟の中に、隠れていることは出来そうもなかった。食べ物だってないだろう。