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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
「うん、ちょうど野馬がいる。これへ乗って駈け付けることにしよう」
「よい思い付きにございます。では私もお供しましょう」
「刑部老人と千賀子殿とは、まさか野馬には乗れまいな。またお前達二人などは、急いで駈けつける必要はない。後からゆっくり来られるがよい」
こう云った時には慶正卿は、既に一匹の野馬の背へ、翻然として飛び乗っていた。
そうして飛び乗った、次の瞬間には、大森林を縫って走らせていた。
その後からこれも野馬に乗った碩寿翁が走らせていた。
はたしてこの頃丹生川平では、恐ろしい事件が起こっていた。
「さあ火をかけろ!」
「火で焼き切れ!」
「どうでも扉はひらかなければいけない」
洞窟の入り口に屯している、丹生川平の郷民達は、こう口々に喚きながら、枯れ木や枯れ草をうず高いまでに、洞窟の扉の前に積んだ。
茅野雄と浪江が郷民を切って、洞窟の内へ入り込んで、内から扉をとじてしまった。呼んでも呼んでも返辞をしない。扉をあけろと命じても、番人は返辞さえしようとしない。
で、郷民達はこう思った。
(茅野雄が番人を切り殺し、内側から閂をかって置いて内陣の方へ行ったのであろう)と。