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せいしまんじどもえ

生死卍巴

国枝 史郎

「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页

青空文庫

ところで最近に京助にとって、面白くないことが起こってきた。

旗本の次男の杉次郎という武士が、女王様のように崇拝をしている、奥様の心をたぶらかして、奥様の心を引っ張り寄せて、愛人としての位置を掴んだかのように、京助に感じられたことであった。

(あの杉次郎という若侍は、どうやら奥様を甘言でまるめて、お金や物品を持ち出すらしい)

これが京助には面白くなかった。

(それに奥様のお兄様だとかいう破落戸のような風儀の悪い、弁太とかいう男が出入りをしては、ずっと以前から、奥様の手から、いろいろの無心をしたようだが、この頃では一層に烈しくなったようだ)

これも京助には面白くなかった。

(どのように奥様にお金があっても、ご自分には財産はないはずだ。旦那様からのお手当でお暮らしなすっておられるはずだ。その旦那様だがこの頃になって、奥様のふしだらに感付かれたものか、昔よりもお手当を減らしたらしい。……で、奥様はご不如意らしい)

これも京助には心配であった。

京助は部屋を見廻して見た。

床の間に香炉が置いてあったが、いつもの香炉とは違うようであった。安物のように思われる。掛けてある掛け物も違うようであった。