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せいしまんじどもえ
生死卍巴
国枝 史郎
「雄弁」1928(昭和3)年9月~1929(昭和4)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 91,598 字 · 182 页
数十軒かたまっていたらしい。
その一軒に刑部という男が、やはり信者として住んでいたが、カアバ勘解由と親交があり、最も信任されていた。が、刑部には商売があって、単なる信者ではなかったそうである。商売というのは古物商で、特に異国の珍器などを、蒐集していたということである。で、好奇の富豪連や、大名などが手を廻して、取り引きをしたということである。
以上は将軍家光時代、寛永年間のことなのであるが、それから数十年の時が経って、享保十五年になった時には、多少趣が変わっていた。
すなわち代々勘解由という名をもって、男性ばかりが継いで来た家が、この代になって女性となり、信者が目立って減って来て、その代わりにただの市民達が、勘解由店へ続々移り住み、普通の貧しい部落となったことが、その一つの変化であり、勘解由家の後を継いだ千賀子という女が、勘解由家代々の主人のように、権力を持っていないばかりか、肝心の実家へもろくろく住まず、江戸の市中や地方などへ出て、人相だの家相だの身の上判断だのと、そういったような貧弱な業に、専心たずさわっているところから、家がほとんど没落してしまった。