轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ゆふいんこう

由布院行

中谷 宇吉郎

「社会及国家」1926(大正15)年5月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,779 字 · 14 页

青空文庫

大きい岩の蔭で急に道が折れる時など、自動車が丁度天へ馳け昇るような気がする。岩を越して、その裏に脈々として続く道を見るまでは、随分冷や冷やすることもある。時々ふり返ると、別府湾がだんだん低く小さくなって行く。登りつめた頃から、周囲は茅の草原になる。鶴見山、由布山のなだらかな麓に、針葉樹の黒い密林が望まれる。そして緑の高原が遠く続いて、ゆるやかな起伏に沿って、所々に黒土の道があらわれている。自動車は安心したように全速力を出す。ここまで来ると、急に空気の冷やかさに気が付く。

こんな景色が一時間近く続く。赤倉の野は三里というが、草原を走る自動車の道は一里に足らない。由布院の盆地の斜面にかかると、自動車はエンジンを止めて、緩やかに降り始める。由布院が見える頃になると、この斜面一帯に牛が放牧されている。自動車の行手にも平然としていて、怪訝そうにこちらを見ていることもある。そしてずっと近くになってやっと愕いて逃げ出す。時には、道の反対側で草を喰っていた仔牛まで、親の逃げる方へ飛び出して轢かれそうになる。運転手は慌ててブレーキをかけながら、「馬鹿!」と大声でどなりつける。