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ちょうないのにてんさい

町内の二天才

坂口 安吾

「キング 第二九巻第一四号」1953(昭和28)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,836 字 · 26 页

青空文庫

だから正坊にそう云ってやったんだ。お前が勝つにきまってるから、あせっちゃいけない。ただ年下の奴が角をひくんじゃカッとして腹が立つ。腹を立てちゃアいけない。静かな落着いた気持で指しさえすりゃア負ける道理がないんだとな」

「じゃア大丈夫ね」

「むろん、大丈夫だ。金太郎の野郎め。今日こそはカンベンならねえ。チンドン屋を先頭に、金太郎はキチガイでござんすという旗をたてて、市内を三べん廻らせてやる」

定刻になると、源サンはセビロを一着して、むろん弟子にヒゲを当らせ頭にはポマードをたッぷりつけて、正坊をつれて会場へのりこんだ。

金サンも当日はセビロである。むろん靴もゴム長ではない。青のサングラスをかけて、ネット裏に陣どった。いよ/\長助のチームが出場の番になったが、その入場に誰も拍手した者がない。応援団が一人も来ていないのだ。相手チームの入場にはけたたましい声援と拍手が起った。応援団ばかりじゃなしに、満場の大半が拍手を送っている。優勝候補筆頭の期待のチーム、県下のホープなのである。

「面白くねえな。しかし、今に見やがれ。吠え面かかしてやるから」

金サンは満場のバカどもに一泡ふかせてやろうと、口に美声錠をふくんで時の至るを待ちかまえた。