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がぼう
画舫
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,863 字 · 22 页
その翌日の夜のことでありました。李景雲はただ一人、西湖の蘇堤を歩いていました。星辰清らかな夜で、月の姿は見えませんでしたが、湖面は仄かな明るみを湛えていました。景雲は多少の酒気を帯ているようでしたが、それよりも更に何か精神的な陶酔に陥っているらしく、足取りは弱々しいながら狂いがありませんでした。じっと眼を地面に伏せ、両手を胸に組んで、ゆっくりと歩きました。時々、頭を挙げて熱そうな頬を空に向け、星の光を仰いだり、胸の両手を伸ばして笛に打振ったりしましたが、またやがて専念の姿勢に戻るのでした。そして蘇堤の――端近くなると、くるりと向きを変えて引返し、他の一端近くなると、またくるりと向きを変えて引返しました。二キロに近いこの長い蘇堤の上を、こうして彼は幾度か往復しました。堤上の楊柳はしなやかな枝葉を張って、風もないのに、柳絮は時折彼の身に舞いおちました。
彼は何を思い耽っていたのでありましょうか。それを言葉に直してみますならば――
私の決心はもう定まっている。これ以外の決定はなし得ないところへまで、私は落ちこんでしまったのだ。いや、落ちこんだのではなく、自然に推移してしまったのだ。