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がぼう
画舫
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,863 字 · 22 页
金田はじっと彼の方に眼を据えました。彼は即座に、強く自分の腿をつねって、その痛みに顔をしかめました。それが、何かの挑戦となったのでありましょうか、金田の拳が飛んで来て、彼の横面を一撃しました。彼はその痛みをもじっと怺えました。
金田の大きな顔が彼の眼の前に覗きだして、低く底力のある声でいいました。
「お前のような奴がいるから、俺はあのひとを保護してやらなければならないのだ。もうあの家へも出入を止めたがよかろう。」
そしてまた拳の一撃が彼の横面へ飛んできました。
彼は思わず立上ろうとしましたが、その時、金田の高い笑い声がしました。
「おい鶯妹、しっかりするんだぞ。この人は君から逃げ出そうとしてるぞ。首っ玉にかじりついて放すなよ。」
鶯妹も、ほかの妓たちも、びっくりして眺めますと、景雲はこまかく震えながら歯をくいしばっておりました。
「ははは、もう喜劇は沢山だ。」と誰かがいいました。「これで乾杯といこう。」
そして一同が乾杯をしています時に、李景雲は立上って室から出て行きました。
ただ不思議なことには、右のようなことが起った時、そしてその前後とも、陳秀梅の名前が誰の口にも上らなかったのであります。