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とめさんとそのおんな
留さんとその女
山本 周五郎
「アサヒグラフ」 1935(昭和10)年9月4日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,799 字 · 14 页
留さんは十七の年に故郷を出た、そのまえの年から彼は霞ヶ浦汽船の水夫として働いていたが、母が死んだあとへ来た後添の継母と折合が悪く――その女は八兵衛(売春婦)あがりであった――どうしてもうまくいかないので、ひと花咲かせるために家をとび出した、そして高浦へやって来てぶるさんの下で働くようになったのである。
留さんはせっせと貯金した、博奕もしなかったし女遊びもきわめてときたまのことであった、それもできれば誰かにおぶさるのだ。酒だけはどうにもならなかった、しかしどんなことがあっても一合ですませる、あとは側にいる誰かに愛相をふりまきながら、相手の酒をちょろまかす。貯金が殖えるにしたがってその倹約ぶりもますますひどい、噂によると船の油をくすねてまで貯めこむという。
やがて貯金帳の数字がひと桁ふた桁と眼につきはじめる時分になると、しかし、――そこで定まったように運命の変化が訪れる、留さんに女ができるのである。
「ねえ留さん」
と高梨の奥さんが云う、「二年だけ辛抱してごらんなさい、悪いことは云いません、おまえさんならできるんだから辛抱してごらんなさい」
「辛抱するだよお神さん」