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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

そこには某藩侯の辻番所がある。これも単に某藩侯とのみ記してあるが、下谷御徒町というからは、おそらく立花家の辻番所であろう。その辻番所の前を通りかかると、番人のひとりが彼の中間に眼をつけて呼びとめた。

「これ、待て。」

由来、武家の辻番所には「生きた親爺の捨て所」と川柳に嘲られるような、半耄碌の老人の詰めているのが多いのであるが、ここには「筋骨たくましき血気の若侍のみ詰めいたれば、世の人常に恐れをなしけり」と原文に書いてある。その血気の若侍に呼びとめられて、中間はおとなしく立ちどまると、番人は更に訊いた。

「おまえの持っているものは何だ。」

「これは西瓜でござります。」

「あけて見せろ。」

中間は素直に風呂敷をあけると、その中から女の生首が出た。番人は声を荒くして詰った。

「これが西瓜か。」

中間は真っ蒼になって、口も利けなくなって、唯ぼんやりと突っ立っていると、他の番人もつづいて出て来て、すぐに彼を捻じ伏せて縄をかけてしまった。三人の番人はその首をあらためると、それは廿七八か、三十前後の色こそ白いが醜い女で、眉も剃らず、歯も染めていないのを見ると、人妻でないことは明らかであった。