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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

僕はしきりに親父に勧めて、この頃はそこら一面を茶畑にしてしまったのだ。」

彼は先に立って案内してくれたが、成程そこらは一面の茶畑で、西瓜の蔓が絡み合っていた昔のおもかげは見いだされなかった。広い空地に草をしげらせて、蛇や蛙の棲家にして置くよりも、こうすれば立派な畑になると、彼はそこらを指さして得意らしく説明した。その畑も次第に夕闇の底にかくれて、涼しい風が虫の声と共に流れて来た。

「おお、涼しい。」と、わたしは思わず言った。

「東京と違って、さすがに日が暮れるとずっと凌ぎよくなるよ。」

こう言いかけて、倉沢はうす暗い畑の向うを透かして視た。

「あ、横田君が来た。どうしてこんな方へ廻って来たのだろう。僕たちのあとを追っかけて来たのかな。」

「え、横田君……。」と、私もおなじ方角を見まわした。「どこに横田君がいるのだ。」

「それ、あすこに立っているじゃあないか。君には見えないか。」

「見えない、誰も見えないね。」

「あすこにいるよ。白い服を着て、麦わら帽をかぶって……。」と、彼は畑のあいだから伸び上がるようにして指さした。

しかも、わたしの眼にはなんにも見えなかった。