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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
」
さっきも幽霊と言い、今もまた幽霊と言い出したのが、わたしの注意をひきました。しかし黙って聴いていると、彼は更にこんなことを言い出しました。
「君は幽霊を信じないと言いましたね。わたしも勿論、信じなかった。信じないどころか、そんな話を聴くと笑っていた。その私が幽霊に責められて、とうとう自分の目的を捨てなければならない事になったんですよ。幽霊を信じない君たちの眼から見れば、実にばかばかしいかも知れない。まあ、笑ってくれたまえ。」
わたしは笑う気にはなれませんでした。山岸の口からこんなことを聞かされる以上、それには相当の根拠がなければならない。といって、まさか幽霊などというものがこの世にあろうとは思われない。半信半疑でやはり黙っていると、山岸もまた黙って天井の電燈をみあげていました。広い二階に坐っているのはわれわれの二人ぎりで、隅々からにじみ出して来る夜の寒さが人に迫るようにも思われました。
しかし今夜もまだ九時ごろです、表には電車の往来するひびきが絶えずごうごうと聞えています。下では鰻を焼く団扇の音がぱたぱたと聞えます。思いなしか、頭の上の電燈が薄暗くみえても、床の間に生けてある茶の花の白い影がわびしく見えても、怪談らしい気分を深めるにはまだ不十分でした。