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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
これはおそらく私の幻覚でしょう。いや、たしかに幻覚に相違ありません。髪の白い女の怪談を山岸から聞かされていたので、今すれちがった自動車の乗客の姿が、その女らしく私の眼を欺いたのでしょう。またそれが本当に髪の白い婦人であったとしても、白髪の老女は世間にはたくさんあります。単に髪が白いというだけのことで、それが山岸に祟っている怪しい女であるなどと一途に決めるわけにはいきません。いずれにしても、そんなことを気にかけるのは万々間違っていると承知していながら、私はなんだか薄気味の悪いような、いやな心持になりました。
「はは、おれはよっぽど臆病だな。」
自分で自分を嘲りながら、私はわざと大股にあるいて、灯の明るい電車路の方へ出ました。ゆうべのような風はないが、今夜もなかなか寒い。何をひやかすということもなしに、四谷見附までぶらぶら歩いて行きましたが、帰りの足は自然に早くなりました。帽子もかぶらず、外套も着ていないので、夜の寒さが身にしみて来たのと、留守のあいだにまた何か起っていはしまいかという不安の念が高まってきたからです。家へ近づくにしたがって、わたしの足はいよいよ早くなりました。