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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
勿論、そのあいだの五間にはともしびを置かないで、途中はすべて暗がりのなかを探り足でゆくことになっていた。
「一体、百ものがたりという以上、百人が代るがわるに話さなければならないのか。」
それについても種々の議論が出たが、百物語というのは一種の形式で、かならず百人にかぎったことではあるまいという意見が多かった。実際そこには百人のあたま数が揃っていなかった。しかし物語の数だけは百箇条を揃えなければならないというので、くじ引きの上で一人が三つ四つの話を受持つことになった。それでもなるべくは人数が多い方がいいというので、いやがる茶坊主どもまでを狩りあつめて来て、夜の五つ(午後八時)頃から第一番の浦辺四郎七という若侍が、まず怪談の口を切った。
なにしろ百箇条の話をするのであるから、一つの話はなるべく短いのを選むという約束であったが、それでも案外に時が移って、かの中原武太夫が第八十三番の座に直ったのは、その夜ももう八つ(午前二時)に近い頃であった。中原は今度で三番目であるから、持ちあわせの怪談も種切れになってしまって、ある山寺の尼僧と小姓とが密通して、ふたりともに鬼になったとかいう紋切形の怪談を短く話して、奥の行燈の火を消しに行った。