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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
」と、わたしは嚇すように言った。
「そうかも知れません。」と、彼は低い声で独り言のようにいった。
「それじゃあ君は何か疑われるような覚えがあるのかな。」
言いかけて私はふと見かえると、折れ曲った生垣の角から一人の女の顔が見えた。女は顔だけをあらわして、こちらを窺っているらしかった。もう暮れかかっているので、その人相はよく判らないが、ゆう闇のなかにも薄白く浮かんでいる彼女の顔が、どうも堅気の女ではないらしい。わたしはそう直覚しながら、さらによく見定めようとする時、不意にわっという声がきこえた。何者かがうしろから彼女を嚇したのである。つづいて若い男の笑い声がきこえて、角から現われ出たのは野童であった。
彼らとわたし達との距離は四、五間に過ぎないのであるから、このいたずら騒ぎのために、今まで隠されていた女の姿も自然にわたしの目先へ押出された。女はコートを着て、襟巻に顔の半分を深く埋めていたが、それが町の芸者であるらしいことは大抵察せられた。野童の家はこの町でも大きい店で、彼も相当に道楽をするらしいから、かねてこの芸者を識っているのであろう。そう思っているうちに、野童の方でもわたし達の姿を見つけて、足早に進み寄って来た。