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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
それでも兄などにいわせると、一年増しに変って行くそうだが、どこがどう変っているのか、僕たちの眼にはさっぱり判らなかった。」
S君の郷里は村といっても、諸国の人のあつまってくる繁華の町につづいていて、表通りはほとんど町のような形をなしている。それにもかかわらず、八年ぶりで帰郷したS君の眼にはなんらの変化を認めなかったというのである。
「そんなわけで別に面白いことも何にもなかった。勿論、おやじの十七回忌の法事に参列するために帰ったので、初めから面白ずくの旅行ではなかったのだが、それにしても面白いことはなかったよ。だが、ただ一つ――今夜の会合にはふさわしいかと思われるような出来事に遭遇した。それをこれからお話し申そうか。」
こういう前置きをして、S君はしずかに語り出した。
僕が郷里へ帰り着いたのは五月の十九日で、あいにくに毎日小雨がけぶるように降りつづけていた。おやじの法事は二十一日に執行されたが、ここらは万事が旧式によるのだからなかなか面倒だ。ことに僕の家などは土地でも旧家の部であるからいよいよ小うるさい。勿論、僕はなんの手伝いをするわけでもなく、羽織袴でただうろうろしているばかりであったが、それでもいい加減に疲れてしまった。