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うみがめ

異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二

岡本 綺堂

岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页

青空文庫

その遺跡は明神跡と呼ばれて、小さい社殿の土台石などは昔ながらに残っていたが、さすがに誰も手をつける者もなかった。そこらには栗の大木が多いので、僕たちも子供のときには落葉を拾いに行ったことを覚えている。

その小袋ヶ岡にこのごろ一種の不思議が起った――と、まあこういうのだ。なんでもかの明神跡らしいあたりで不思議な啼声がきこえる。はじめは蛙だろう、梟だろうなどといっていたが、どうもそうではない。土の底から怪しい声が流れてくるらしいというので、物好きの連中がその探索に出かけて行ったが、やはり確かなことは判らない。故老の話によると、昔も時々そんな噂が伝えられて、それは明神の社殿の床下に棲んでいる大蛇の仕業であるなどという説もあったが、勿論、それを見定めた者もなかった。それが何十年振りかで今年また繰返されることになったというわけだ。

人間に対して別になんの害をなすというのでもないから、どんな啼声を出したからといっても別に問題にするには及ばない。ただ勝手に啼かして置けばいいようなものだが、人間に好奇心というものがある以上、どうもそのままには捨て置かれないので、村の青年団が三、四人ずつ交代で探険に出かけているが、いまだにその正体を見いだすことが出来ない。