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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
なぜ小袋ヶ岡へ行ったのか、それもはっきりとは判らないが、理科の教師だから多分探険に出かけたのだろうということだ。」
「死因はともかくも、探険に行ったのは事実でしょう。僕はきのうその人に逢いましたよ。」と、僕は言った。
きのう彼に出逢った顛末を残らず報告すると、兄もうなずいた。
「それじゃあ夜になってまた出直して行ったのだろう。ふだんから余り健康体でもなかったそうだから、夜露に冷えてどうかしたのかも知れない。なにしろ詰まらないことを騒ぎ立てるもんだから、とうとうこんな事になってしまったのだ。昔ならば明神の祟りとでもいうのだろう。」
兄は苦々しそうに言った。僕も気の毒に思った。殊にきのうその場所で出逢った人だけに、その感じがいっそう深かった。
前夜の探険は教員の死体発見騒ぎで中止されてしまったので、今夜も続行されることになった。教員の死因が判明しないために、またいろいろの臆説を伝える者もあって、それがいよいよ探険隊の好奇心を煽ったらしくも見えた。僕の家からはその探険隊に加わって出た者はなかったが、ゆうべの一件が大勢の神経を刺戟して、今夜もまた何か変った出来事がありはしまいかと、年の若い雇人などは夜のふけるまで起きているといっていた。