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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
盂蘭盆がなんだ、盂蘭盆の晩でも、大阪商船会社の船は出たり這入ったりしているじゃあないかと、僕は腹のなかで笑いながら、そしらぬ顔で表へ出ると、万兵衛は強情に追っかけてきて、漁師の舟さえ今夜は休んでいるんだから、遊びの舟なぞはなおさら遠慮しろというのだ。勿論、僕がそんなことを取合う筈もない。あたまから叱りつけて出ようとすると、美智子さんは女だから、万兵衛にむかって、すぐ帰って来るから安心してくれとなだめるように言い聞かせて、二人はまあ浜辺へ出たのだ。」
こう言いながら、清は路ばたに咲いている桔梗のひと枝を切り取った。どこやらでひぐらしの声がまたきこえた。
彼は薄むらさきの花をながめながら又話し出した。
「君も知っている通り、浜辺の砂地には僕の家の小舟が引揚げてある。それをおろして、僕は美智子さんと一緒に乗込んだ。今に始まったことじゃあないから、そんなことは詳しく説明するまでもあるまい。僕が櫂をとって海へ漕ぎだすと、今夜は空が晴れている。星がでる、月がでる。浪はおだやかで、風は涼しい。これまで美智子さんと幾たびか海へ出たが、こんなにいい晩は一度もなかった。