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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
岡本綺堂『異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二』。同一底本的分册已合并为一书。收入:海亀、鴛鴦鏡、鐘ヶ淵、こま犬、水鬼、指輪一つ、離魂病、木曽の旅人、西瓜、白髪鬼、百物語、妖婆、停車場の少女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 144,507 字 · 291 页
しからば一匹ではあるまい。どうしても一対であるべきはずだというので、さらに近所を掘り返してみると、ようやくにしてその台石らしい物だけを発見したが、犬の形は遂にあらわれなかった。
この話を聞いて、僕はその翌日、兄と一緒に再び小袋ヶ岡へ登ってみると、きょうは縄張りが取れているので、大勢の見物人が群集して思い思いの噂をしていた。蛇の死骸はどこへか片付けられてしまったが、かの狛犬とその台石とは掘り返されたままで元のところに横たわっていた。
「むむ、なかなかよく出来ているな。」と、兄は狛犬の精巧に出来ているのをしきりに感心して眺めていた。
それよりも僕の胸を強く打ったのは、かの四角形の台石であった。かのMという中学教員が――おそらくその人であったろうと思う――ステッキで僕に指示して、「もし果して石が啼くとすれば、あの石らしいのです」と教えたのは、確かにかの石であったのだ。Mはそれに腰をかけて死んだ。辰子という女もそれに腰をかけて死んだ。そうして、その石のそばから蛇にまき付かれた石の狛犬があらわれた。こうなると、さすがの僕もなんだか変な心持にもなって来た。
僕はその後十日ほども滞在していたが、かの狛犬が掘り出されてから、小袋ヶ岡に怪しい啼声はきこえなくなったそうだ。