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ぎわく

疑惑

芥川 竜之介

一个学者去小城讲学,住进幽静别庄,却意外听到一桩悲惨往事的线索。到底发生了什么,让他至今难忘?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,341 字 · 25 页

青空文庫

今ではもう十年あまり以前になるが、ある年の春私は実践倫理学の講義を依頼されて、その間かれこれ一週間ばかり、岐阜県下の大垣町へ滞在する事になった。元来地方有志なるものの難有迷惑な厚遇に辟易していた私は、私を請待してくれたある教育家の団体へ予め断りの手紙を出して、送迎とか宴会とかあるいはまた名所の案内とか、そのほかいろいろ講演に附随する一切の無用な暇つぶしを拒絶したい旨希望して置いた。すると幸私の変人だと云う風評は夙にこの地方にも伝えられていたものと見えて、やがて私が向うへ行くと、その団体の会長たる大垣町長の斡旋によって、万事がこの我儘な希望通り取計らわれたばかりでなく、宿も特に普通の旅館を避けて、町内の素封家N氏の別荘とかになっている閑静な住居を周旋された。私がこれから話そうと思うのは、その滞在中その別荘で偶然私が耳にしたある悲惨な出来事の顛末である。

その住居のある所は、巨鹿城に近い廓町の最も俗塵に遠い一区劃だった。殊に私の起臥していた書院造りの八畳は、日当りこそ悪い憾はあったが、障子襖もほどよく寂びのついた、いかにも落着きのある座敷だった。私の世話を焼いてくれる別荘番の夫婦者は、格別用のない限り、いつも勝手に下っていたから、このうす暗い八畳の間は大抵森閑として人気がなかった。