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ぎわく

疑惑

江戸川 乱歩

「写真報知」報知新聞社、1925(大正14)年9月15日、25日、10月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 37 页

青空文庫

何だか自分が恐しい犯罪者になった様な気がした。親父を殺したのも実はこのおれだったのではないか、ふっとそんなことを考えた。おれは夢遊病の話しを思い出した。いつかの晩も、やっぱりこんな風にして、屋根を伝って、親父を殺しに行ったのではないか。……おれはゾーッと身ぶるいがした。だが、よく考えて見れば、そんな馬鹿馬鹿しいことがあろう道理はないのだ。あの晩、親父の殺された刻限には、おれはちゃんと自分の部屋で目をさましていたはずだ。

おれは跫音に注意して、例のほこらのうしろへ行った。月の光でよく見ると、ほこらのうしろの地面に、掘返したあとがあった。サテはこれだなと思って、手で土をかき分けて見た。一寸二寸と掘て行った。すると、存外浅い所に手ごたえがあった。とり出して見ると、それは見覚えのある。自分の家の斧だった。赤くさびた刃先の所に、月の光でも見分けられる程、こってりと黒い血の塊がねばりついていた……」

「斧が?」

「うん、斧が」

「それを、君の妹さんが、そこへ隠しておいたというのか」

「そうとしか考えられない」

「でも、まさか妹さんが下手人だとは思えないね」

「それは分らない。